【Product Details】
小林茂太
Stratum

2度目のアイスランド訪問から数年経て、当時の写真を見返してみる。

瞬間を切り取る「記録」装置としての写真。
それは、その時自らの目には映らなかったもの、気づかなかったものまで鮮明に記録している。

一方、頭の中の「記憶」はどうか。
月日が経つごとに徐々に薄れていき、思い出せることは断片的でほんの一部。

この作品は今の頭の中の朧げな「記憶」を写真ではどう表現していくのかにアプローチしている。

「stratum」はそもそも、作品の展示をメインにして出版している。

覚えているのは写真の一部。
ならば大きい写真の１部に焦点をあて、他は切り捨てる。

では、「記憶の風化」はどう表現すべきか。
紙よりももっと経年変化の早い「鉄」を採用する。

こうして鉄板の上にクローズアップした写真を印刷するという手段にたどり着いた。

ただ、この作品を冊子にするにはその「質感」をできるだけ表現したい。

その答えは無垢の鉄板を一度写真に収め、紙に印刷。
その上から写真を印刷することで背後にうっすらと光る鉄が感じられる表現にたどり着いた。

ぜひこの作品は記憶のアプローチとその表現方法まで体感していただきたい。

サイズ： 15x22cm
ページ：32p
刊行年：2022年
出版：books cairn

【小林茂太】
小林茂太
1985年新潟県生まれ。
大学卒業後、都内商業写真スタジオ勤務を経て、2014年に写真家として独立。
空間に表出した人間や自然の活動の痕跡に着目し作品を制作。

主な作品に、アイスランドにて記録した作品「AURORA」(2019年)、「cairn」(2020年)。

その2度目の滞在時の記録として残った写真を用いて、時間と共に薄れていく記憶のゆらぎに着目した作品「stratum」(2022年)を制作。

また、藍染の工程を撮影した写真をもとに「染める」という行為を印刷物として表現した作品「yoha」(2020年)を制作。